自伐塾、その後〜ニセコ町澤田さん〜

2018年10月10日

自伐型林業家養成塾も2017年から始まり、2年目を終えようとしています。2017年度に開催されたのは、洞爺湖町。あれから1年が経過し、養成塾を経て、現在どのように活かしているのでしょうか。

澤田健人さんは、北海道自伐型林業推進協議会の立ち上げから会員として参加。元々は美容師であり、ニセコ町の地域おこし協力隊制度を経て、森林から生み出る林産物を加工したいと考え、合同会社Hikobayuを2018年起業。自伐型林業の施業方法を活用して夫婦で作業道をつくり、白樺の樹皮を活用したクラフトや、木の枝葉を蒸留し、エッセンシャルオイルを開発しています。
具体的な技術を学ぶべく、2017年度自伐型林業家養成塾の塾生として参加されました。今回は、施業中のニセコ町の山林でお話を伺いました。

ーーー自伐塾から一年ほど経ちますが。

「自伐型林業家養成塾に参加する前から自伐型林業は始めていたので、実践後の参加でした。ひと通りこれで自伐型林業を実施したということになるので、誰でもやればできるだろう、と思っています。私は林業の経験はなく、全然畑違いなのに出来ているので、もっと素養がある人にとってはやりやすいのではないでしょうか。大工だとか、重機を使える人、チェーンソーを使う人は良いと思います」

ーーーあとは、やり方を学べば、ということですか。

「はい。身体を動かす仕事はつらいという方や、そういう年齢になってきた方は、他に誰か得意な人を見つけて施業した方が良いのではないでしょうか。全てひとりでやると、効率の悪い部分も出てくる。特に重機(バックホーや林内作業車)があるときに、できるだけ借りている間に動かしたいけれど、他の人が伐採してくれたりしないと、重機があっても重機以外の仕事もやらなきゃいけないなど、無駄が多くなります。道を付けるだけであれば、一人で施業できない事もないなと感じました」

ーーー自伐塾に参加している人でも、パートナーがいないというのは、抱えている課題だと思います。一人が自伐型林業に興味を持ち、当人はきこりや特殊伐採をやりたいなという人も多いので、澤田さんが実践されているようにパートナーやチームがいて、という形でやらないと難しいのでしょうか。

「特殊伐採※の方は木に携わりたい、きこりポジションが合っています。本職をもっていて、土日しか来れません、という形なら、道付けだけは週2日ではできません。そこは、誰か道付けできる方にお願いして、その他の作業は土日にきこりの本人がメインでやるというのは可能かもしれません」

※ 特殊伐採…伐採する木の近くに建物があるなどで、倒さずに伐採したり、木に登って伐採すること等をさす

ーーーパートナーは塾のメンバーで揃えた方が良いのでしょうか。

「色々なパターンがあって良いと思いますが、施業の段取りは考えた方が良いです。誰が何をやって、一連の流れで何をやるかを想定して、ひとりならどのぐらいのペースになるのか、重機のレンタル期間は無駄にならないか、考えてやればどうにでもなると感じています」

ーーー塾をやっている時点で既に、作業道敷設を始めていましたよね。情報が少ないなかで作業を進めていて、塾に参加した事でどのような変化がありましたか。

「伐採や道付けのことは、トップレベルの人たちが(自伐塾に)講師で来てくれているので、お手本を見られたのはすごい勉強になりましたし、自分がやってみた事を質問できたのが良かったですね。やっていて怪しかったこととか、これってどうすれば良かったのですか?と聞いたことが、今回につながったのではないかと思います。まったく初めて習うよりは、実践してみてもう一度聞いているので、具体的な質問ができたかなと。実地研修を見ているときも、見ながら改めて理解できた気がします」

ーーー岡橋清隆さんの作業道講習はいかがでしたか?

「座学は正直なところ、最初は頭に入りませんでしたが、何となく徐々に理解できたというか。奥が深いものだな、と常々思います。会えば会うほど、自分の理解もちょっとずつ進んでいると感じますし」

ーーー実地研修はいかがでしたか?

「どの森林でも本当に同じものというのはないし、沢山見たほうが勉強になるのではないかなと思います。岡橋さんもそうですし、他の仲間がつけているところも勉強になります。高いレベルの施業もそうですが、両方見るのが良いと感じています」

ーーー自伐型林業を始める人たちが補助金などの助走を含めたスタートが多いですが、全体的には山を借りて始める、というのがあまり進んでいないのかなと感じますがいかがでしょうか。

「土日だけ林業したいという方なら、札幌に住んでいるとすれば庭木が多いと思いますが、山を借りて移動で2時間かかるということだと、なかなかきつい。だからこそ特殊伐採かな、という風になるのかなと見ていて思います。それがやりたいならやれば良いのだけど、山を確保すれば、土日だけしかできない人でもできる。道付けだけは大変だけど、それは他の人に依頼するとかして、組み合わせれば良いと思う。それで、土日に間伐して、搬出して、というのをメインでやれば」

ーーー林業としてやるなら、材を出すのが基本だと思うのですが、昨年は材を出しましたか?

「昨年は出していないです。今年は、高密度路網をつくり終わっているので、軽トラックで本当にいけるのかなと思っていたけど、全然問題なかった。やっと今年搬出してみて、自伐型林業を実感できました」

ーーー搬出したものの買取先は、直接問合せたのですか。

「聞きに行ってみたら、倶知安の営業所ではそういう動きはしていなくて、薪ストーブの販売設置の企業なので、その顧客に薪を紹介してあげるよ、ということにはなった。出せる分を出して、とりあえずやってみようか、という事に。毎年定期的な量を生産できるかもまだ決まっていないので、直営の薪販売、ということにもできない。間伐も軽度で、そんなにたくさんは出ないし、これだけやって薪屋です、という訳にはいかない。少し出ますよ、というのをせっかくだから使いましょう、ということで薪になりました」

ーーーその他に、販路は見つけましたか。

「美容室でも働いているので、ペンションのオーナーが美容室のお客さんでいらしたりするのですが、『買うよ』と言ってくれている。草の根みたいな形でも、この地域(ニセコ町)は薪ストーブユーザーが多いので、チラシをつくれば販路はあるのでは、と思います」

ーーー協議会の会員の中でも買い取ってくれたり、という事もありますが、そういう機会は活用したい?

「それは買取先なので、選択肢があるのは良い事だと思います」

ーーー少し思うのは、塾生が近郊エリアに3人いたとして、その人たちの得意とする分野がうまく絡み合えば良いのかなと思っていて、ニセコエリアは同時に数人生まれ、助け合いを行うのがうまくいっていると感じています。

「一人でやるのは、例えば下敷きになっちゃったとかいうときも助けられないし、安全面でも数人でやったほうが良い。なんでもそうだけど、1+1は2じゃなくそれ以上になるので、1人は無駄が多くなってしまう。これお願い、というので日当を出したりして分け合えば良い」

ーーー塾を受けるかどうか迷っている人、独学でやりたいんだという人に対してメッセージを。

「見ないでぼんやりするよりは、トッププレイヤーを見て、それでスッキリして実施した方が良いんじゃないか。それはあなた次第だけど、トッププレイヤーを超えたいのか、それ以下でやっているのかは一回見ればわかるし、それを見る気もないのか、という話だし、せっかくやるんだから、良い機会だから受講してみては?と思います。山を買うなり、借りるなり、先祖なり、あとはやるだけなので。重機問題で困っている人もいたけど、協議会で解決を検討していますし、個人じゃ借りられない場合、借りられる人から借りれば使えます。しっかり保険も入れば良いですし。作業道敷設は、最初は小さくやれば良い。僕みたいに2000mつけるとかやらないで(笑)、300mぐらいからやってみて。土日だけだと本当に厳しいので、2週間借りて、4日動かすとか。そのぐらいで100mとかでもつけてみれば、その分の木材は搬出できます。補助金を活用すれば、重機代も対象になります。林野庁は、その形を推奨しているので、制度はうまく使って始めてみれば良いのではないでしょうか」

以上が、澤田さんよりお話を伺った内容です。
参考までに、売上の内訳も伺いました。

澤田さんの林業に関する全体の売上内訳です。森林施業(作業道敷設、森林作業)に対する補助をスタートアップに活用し、今後の経営に役立てています。元々の職業である美容師売上、林業に興味を持ったきっかけである精油や白樺樹皮のクラフト売上のほか、ニセコ町という場所柄もあり、民泊代行も実施しているそうです。

補助金無しで林業経営を進めていく場合の例として、以下のリンクもご覧下さい。
外部リンク:大西林業 季刊地域No.32への寄稿

2018年度は既に終了している自伐型林業家養成塾。2019年度も春より開催予定ですので、参加してみてはいかがでしょうか。

澤田さんへのお問い合わせは以下よりお願いいたします。

http://www.hikobayu.com/

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