森に遊び、森に学び、生きる。 – 池田町 “新しいプレイヤーの形”

2026年3月12日

森の声をきく #07

急な依頼の伐採の対応を終えて、少し土の匂いをまとったまま取材に現れた。
株式会社Minotake・頓所(とんどころ)幹成28歳
林業、ハンター、特殊伐採、鹿皮クラフト。
どれもバラバラのようでいて、彼の中では自然につながっている。
「今が本当に楽しいんです」
穏やかに笑いながらそう言う頓所さんは、森とともに生きる“新しい世代の林業者”だった。

01|協力隊から始まった「森の複業」

2020年、大学卒業後すぐに池田町へ移住し、地域おこし協力隊として着任した。
当時は鹿皮クラフトを中心に活動するつもりだったが、町内の研修で自伐型林業と出会い、森の可能性に惹かれていった。
いま、クラフトは作家活動というより「地域の手仕事」として根を張る。
高校でワークショップをしたり、子育て支援プロジェクトで小学生に鹿皮バインダーを贈ったり。
町の資源を次世代につなぐ役割として、確かな価値を持ち始めている。

02|「不満がゼロに近い」暮らしの理由

いまの生活を問うと、頓所さんは少し笑いながらこう言った。

不満がゼロに近いんですよね

理由はシンプル。
好きなことを、好きな形で、全部やれているから。
森で木に登る日もあれば、鹿を追い、クラフトをし、作業道をつける日もある。
一見バラバラだが、すべてが森を軸にした一つの円になっている。
「どれも飽きないし、それぞれ違う面白さがあるんです」
まさに“森林業”という言葉が自然と形になったような働き方だ。

03|「技術が手に馴染むまで」

新しいことより、丁寧に積む時期
今後の展望を尋ねると、彼はこう答える。

今は、技術を身体に馴染ませていくフェーズだと思ってます

伐採、解体、道づくり、クラフト。
どれも奥が深い。
始めて数年では、まだ“わかった気になれない”という誠実さが頓所さんらしい。
だからこそ新しいことを増やすのではなく、
いま手にしている技術を「丁寧に積む」時期だと感じている。
クラフトも最初から上手かったわけではない。
探り探りだった頃の経験があるから、今の作品づくりに通じている。
静かに積み上げる姿勢は、森そのものの成長のようだ。

04|この生き方を「おすすめできる」理由

「この働き方、ほかの人にもすすめられる?」
と聞くと、迷わず頷いた。

めちゃくちゃおすすめできます。ただ、みんな組み合わせが違うと思う

確かに彼の働き方は“頓所幹成という人間”にぴったりフィットしている。
同じように真似できるものではないが、
森の中にはいくつもの役割が転がっていて、
誰でも自分だけの組み合わせを見つけられる。
若い今だからこそ、体を動かして稼ぐことも全力で楽しめる。
年齢とともに仕事の中身は変えられるし、効率化もできる。
柔軟で、しなやかな未来が見えている。

05|仲間に恵まれ、後を追い、また次へ渡す

頓所さんは言う。

いい先輩に恵まれているから、僕はずっと後ろをついていってるだけです

特殊伐採の先輩、自伐型林業の先輩、狩猟の先輩。
分野ごとに“走っている人”がいて、その背中を追うことで成長してきた。
そして今は、自分を見て興味を持ち、訪ねてくる若者も増えてきた。
「若くてもやれるんだ」という空気がつくられている。
それは、地方移住のハードルを下げる小さな“風”になっている。

06|森づくりの魅力

山に委ねるライン、攻略する伐採
仕事の楽しさを語るとき、頓所さんは一番楽しそうに話してくれた。
伐採は“ゲーム”に近い。
木の形、足元の状態、風。
攻略する方法は毎回違う。
クリアしていく感覚が快感だという。
森づくりは逆だ。
「自分の思い」よりも、
“山がどうしてほしいか”を聞く仕事
どこに道をつければ自然に優しいか。
完成したラインの美しさに、山との対話が宿る。
狩猟は命を扱う仕事。
獲る、解体する、届ける、食べてもらう。
命の価値観を共有できるのは「獲ってから届けるまでをできる人」だけの特権だ。

07|プライベートはインドア

それでも今が最高の理由
意外にも、プライベートは漫画・映画・アニメのインドア派。
山歩きは趣味だったが、今はもう仕事で楽しめている。
そしてこう言う。

全部ちゃんとお金になってる。それがすごく大きいです

動いた分だけきちんと結果が返ってくる。
生活が豊かになる実感がある。
それが、彼の“今が最高”につながっている。

08 | 森に遊び、森に学び、生きる

森に遊び、森に学び、森とともに生きる
どのジャンルにも、彼の才能は静かに光っていた。
器用で柔らかく、楽しむ力があり、
そして「丁寧に積む」という芯の強さがある。
森に遊び、森に学び、森を仕事にし、
仲間と笑いながら未来をつくっていく。
28歳という若さで、
ここまで自然体で森と関わり、
ここまで仕事を楽しむ姿は、
自伐型林業の“新しい可能性”そのものだ。
頓所幹成というひとりの若い林業者が、
池田の森で小さく、でも確かに、
次の時代の入口を開いている。


構成/取材/撮影/編集
澤田 健人(副代表理事)

制作
合同会社HIKOBAYU
Director / Filmmaker / Writer

助成
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